私がパーソナリティを担当して10年になる朝の生ラジオ番組には放送中、何百通ものメールやTwitterのつぶやきが届く。それぞれの空の下で、真面目に日々を暮らし、働き、今を生きる市井の方々からだ。メッセージの内容は、好きな食べ物とか、家族の笑っちゃった話などたわいもない話から、悩み相談、人生の節目の話など幅広い。
最初は放送内でメッセージを読むことだけで精一杯だったが、毎日、毎月、毎年と放送を重ねていくうち、いつの間にか自分自身がそのやりとりに元気づけられるようになっていた。お馴染みのラジオネームもどんどん増え、まるで知り合いの近況報告を受けるかの如くメッセージを読み、そのうれしさや悲しさに共感する。「こんなに共感できる方々と私は繋がっているのだ、共に今の時代を生きているのだ」と勇気づけられ、自分もがんばろうと思えた。
さらにこのコロナ禍。どんなことがあっても自分に寄り添ってくれると信じられる人間関係が、いかに支えになるかということを実感している。行き詰まったとき意外な人が助けてくれたり、思いも依らぬ協力で励ましてくれたり。それは物理的に近くにいるとか、職場や学校が一緒とか、役に立つ関係とか、打算や義務からの繋がりではなく、「共感しあいたいと思うこと」で繋がるご縁。それがいざというときのライフラインになるのだ。
遠くの親戚より近くの他人。
そんな縁を大いに活かせば、私たちはもっともっと元気に、心健やかに暮らせるのではないかという思いから生まれたのが、「近くのスミヨシ」のアイデアだ。
昔は同じ場所に集まるしかなかったクラブ活動。今は、さまざまなテクノロジーによって、距離、空間や時間を超越した繋がりを作り、育み、分かち合うことができる。時空を超えた、人生の部活はできないものだろうか。
今まであるようでなかった新しいコミュニティの在り方、優しくてしなやかなコミュニティを育てる旅が始まっている。
2020年12月
主宰・住吉美紀
プロフィール
<主宰>
住吉美紀
フリーアナウンサー/文筆家。
小学時代はアメリカ・シアトルで、高校時代はカナダ・バンクーバーで、英語と日本語両方の文化で育つ。
国際基督教大学(ICU)卒業後、1996年にアナウンサーとしてNHK入局。
「プロフェッショナル 仕事の流儀」キャスター、「第58回NHK紅白歌合戦」総合司会ほか、海外取材や音楽番組、インタビューや生中継番組など多岐に渡って担当。
2011年よりフリーに。
2012年から Tokyo FM 朝の情報ワイド番組「Blue Ocean」(月~金、9:00~11:00)のパーソナリティを務め、気づけばラジオはライフワークに。
2020年より夫とオープンしたカフェ「ミアヴァート珈琲」では店のプロデュースや焼菓子製作などを担当。
茶道 裏千家流 正引次(講師)、シヴァナンダ・ヨガ正式指導者資格、NARD JAPAN認定アロマアドバイザー資格。
著書に「自分へのごほうび」(幻冬舎)。